地域暖房 推進事業

 
図1:地域熱供給の仕組み 地域熱供給は、工場排熱、ごみ焼却熱、バイオマスなどのさまざまな熱エネルギーを、各施設や住宅などに熱導管で供給するネットワーク
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地域暖房とは

 
地域暖房とは、地域で熱を発生させる各施設(工場排熱、ごみ焼却熱、バイオマス、地中熱、地熱など)から、熱を発生させない各施設(住宅、商業施設、文教施設、公営施設など)へ熱導管を利用して、熱を供給するシステムになりますが、このネットワークの構築により、いままで、捨てるしかなかった貴重な熱エネルギーを需要者に提供できるようになり、かつ、需要者も自前の暖房システムを導入する必要が無くなるので、地域内で効率的な熱エネルギーの活用ができるようになります。

欧州では重要なインフラ


気候が寒冷な北欧周辺諸国では、地方自治体や地方自治体所有の公営企業が主導して、熱供給インフラを整備しており、ある地域の複数の建物すべてに、温水や蒸気などの熱を配管で供給する地域熱供給が、古くから発達しています。
これらの地域では、冷熱用の配管の設置を省いて、温熱用の配管のみを設置することが多いので、熱導管ネットワークの建設コストを安く抑えられる下地があり、これにより、長大な熱導管ネットワークが構築されています。
欧州では、地域熱供給には、暖房だけでなく、冷水を供給する地域冷房もありますが、圧倒的に需要が多いのは、地域暖房であり、暖房は、エネルギーの用途として圧倒的に大きいため、建物や部屋を個別に暖房するよりも地域全体を集中的に暖房する方が、はるかにエネルギー効率が良いことから地域暖房が発達し、商業施設のみならず、住宅部門の普及率も高くなっており、欧州熱電協会の2014年の調査では、欧州における地域熱供給ネットワークは、その普及率は、13%前後となっています。
この熱は、ごみ焼却所などエネルギープラントでつくられ、熱導管を通じて、ある一定のエリアの暖房熱を効率的にまかないますので、
地域暖房は、欧州を中心に、アメリカ・カナダの寒冷地域や中国、韓国などにも広がりつつありますが、日本では、聞いたことがある人の方が少ないと思います。

逆・VPP


物理学の理論
では、熱から発電する際の発電効率は、4割程度しかないことが分かっているので、
ごみ焼却熱や工場排熱、風力発電の余剰電力でつくられた熱などのさまざまな未利用エネルギーを活用すれば、エネルギーを余すことなく有効に使えるので、省エネを考えると地域暖房の仕組みは、非常に効率的で、優秀なシステムになります。
電気を使った個別暖房は、発電所などで化石燃料由来の燃料等を燃やして電気をつくり、それを送電し、使う場所で、エアコンなどによって個別に熱に変えて使うという複雑なプロセスを経て利用されていますが、このプロセスだと、必然的にロスが生じ、余分な燃料を利用することにつながるので、地球温暖化対策としては、一番、不適格なプロセスになります。

普及を牽引するデンマーク


欧州の中で、早くから先進的な地域熱暖房の取り組みをしてきたのが、デンマークであり、元々は、ごみ処理問題の解決策として始まった地域暖房は、すでに100年以上の歴史があります。
1979年にデンマークは、省エネルギー・脱石油の重点施策として地域暖房を位置づける「熱供給法」を制定しましたが、この法律により、地域の特性を知る地方自治体が発電に応じた最適な熱供給プランを自ら立てられるようになったのです。
1982年には、各地方自治体はすべての住民に対して、天然ガス導管あるいは地域暖房ネットワークのいずれかに接続することを義務化し、1988年には、住宅において電気による暖房を禁止しました。
1970年代後半までのデンマークは、エネルギー需要の90%以上を輸入原油に頼っていましたが、1997年には地域暖房の導入や風力発電の普及もあって、エネルギー自給率100%を達成しており、現在では、デンマーク全土の熱需要全体の約50%(家庭用需要の63%)を地域熱供給のシステムでカバーしています。デンマークの地域暖房の熱源は、麦わらやごみなどのバイオマス、または天然ガスを燃やして発電し、その排熱を使うコージェネレーション(熱電供給)が中心となっており、発電時の排熱を利用するコージェネレーションは、電力と熱を合わせたエネルギーの総合効率が、90%台と極めて高いですが、デンマークで、採用されているコージェネレーションは、大型の集中プラントもありますが、その多くが小型である点も特徴となっています。
小規模な発電装置を消費地の近くに分散配置し、電力の供給を行うことを、分散型電源・VPPといいますが、これによって送電設備が小さくてすみ、送電ロスが減ります。
分散型電源は、エネルギーの自給やエネルギーの効率化と同じぐらい重要なトレンドとして欧州では認識されているので、これによりデンマークでは、1980年代中頃まで、国内には、いくつかの大型発電所があるのみでしたが、現在は、無数の小型コージェネレーションによる分散型発電に変わっています。

欧州各国で広がる地域暖房

地域暖房は、欧州の各国でも、CO2削減や省エネにおける重要な施策として導入が進められており、スウェーデンは、地域熱普及率が、共同住宅で90%以上、熱導管が、総延長22,000kmにもなるデンマークと並ぶ地域暖房の先進国になります。
スウェーデンも、以前までは、地域熱供給の燃料として石油を主燃料としていましたが、オイルショック以降、バイオ燃料や廃熱利用が増加し、現在の地域熱供給の燃料に占める化石燃料の割合は約7%程度と低く抑えられており、将来的には、植物や野菜をつくる温室や家庭にあるオーブン、洗濯機や乾燥機も、地域熱供給の熱の利用をする計画があります。
ドイツも、熱供給の導入が進んでおり、地域暖房が、国全体の熱需要の約12%を占めており「熱基金」といった資金調達を目的とした基金が設けられ、熱供給事業者が、コージェネレーションを導入したり、熱導管を整備したりする際には、事業者に対する給付金の補助を手厚く行っています。
イギリスでは、1950年代から熱供給が始められましたが、世界的なCO2削減の動きの中で、2010年に、エネルギー・気候変動省が作成したレポート「熱の将来」によって地域暖房にスポットライトがあたり、熱供給の普及が急速に進んでいます。

原動力は地方自治体

欧州各国で、地域熱供給が普及する原動力は、地方自治体であり、その手法は、民間企業と地方自治体が20~40年にわたる契約を締結し、地方自治体は、企業に対して契約期間中の供給義務を負わせる代わりにプラント新設用の土地を無償で貸与し、同時に、建物の開発者に対して熱供給への接続義務を負わせる、といった施策がとられています(当社のPPAモデル事業と100%同じスキームです)。
欧州では、地域暖房が電気や水道と同じ生活の重要なインフラとして位置づけられており、省エネやCO2削減などを目的とした環境施策として、国やEU全体が強力に推進し、地方自治体が、主体となって整備が進んでいます。
このように、地域のことは、地域に采配をまかせるのが欧州流ですが、いまの日本に住んでいる私たちから見ると、羨ましい限りですが、日本では、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対しての対応を見てても、一部の優れた首長がいる地方自治体では、地域熱供給(地域暖房や地域冷房)システムの事業化の実現可能性がありますが、圧倒的に多い他の地方自治体では、地方自治体が率先して施策を講じるという意識改革が完了する前に、人口減少による持続不可能な状態に陥るでしょうから、そのような日は、永遠に来ないと思います。

熱と電気を統合するスマートな地域熱供給


デンマークでは、ある地域に熱を供給する場合、熱と電気の両方を供給するコージェネレーションからの熱供給に加え、ごみ焼却場や工場から出る排熱から、最近では、太陽熱まで幅広い熱が配管を通じて送られており、
コージェネレーションでは、麦わらや家畜の排泄物などの農業残渣が燃料として積極的に使われ、地域暖房の燃料についても、化石燃料からバイオマスや太陽熱といった再生可能エネルギーの活用へと移行しつつあります。
地域熱開発の第1、第2世代は、高温の蒸気や100度以上の高温水を利用、第3世代は、80~90度の熱供給を利用、第4世代は、60~70度の低温水を利用しますが、この第4世代の地域熱供給システムは、家庭で必要とされる熱の多くが25度(暖房)~60度(給湯)の温度であることに着目して開発されたシステムであり、低温水を利用してエネルギーを、さらに、有効利用しようという点が世界中から注目されています。最近では、電気だけでなく熱の出力も制御できる熱電スマートメーターを活用し、より効率よく地域のエネルギーを活用するシステムも始まっていますが、これは、風力発電で過剰となった電力で、お湯をつくり貯湯槽で熱として蓄えたり、風力発電の増減に合わせて、コージェネレーションの出力を上げ下げして需給の変動を調節するものですが、この方法は、発電と発熱を同時発生させるコージェネレーションならではの方法と言えます。

地域暖房について


地域暖房システムは、海外では、その歴史も長く、重要なインフラとして整備されていますが、その理由は、効率的という理由以外にも、いま、大きな問題になっている地球温暖化の抑制効果が高い、という側面も強くあります。
地域暖房は、暖房や冷房、給湯などに使う電気を作るための燃料を、海外に大きく依存している日本でこそ、世界に先駆けて導入すべきシステムですが、日本での普及は難しいと思います。
欧州の考え方は、日本と根本的に違い、その違いは、環境面に対する行動でも明らかです(発言に行動が伴う欧州の国々と口だけで結果に責任を取らない日本)。
つまり、海外の考え方は「自分ができることは自分でやる」「自分の社会的ポジションに見合った責任が自分にはある」というポジティブな自己責任論です。
日本も、自己責任論が強いですが「誰かがやってくれるだろう」「責任を取りたくない」という他力本願論も強いので、ここで、日本特有の様々な問題が生じてきます。
日本では、ネガティブな自己責任論が主流なのは、今回の新型コロナウイルス感染拡大に対する国や政治家の言動や行動を見れば明らかだと思います。
そのネガティブな自己責任論のしわ寄せを食うのは、国民です。
いまの日本の政治家が、国民のことをまったく考えていないことは、今回の新型コロナウイルス感染拡大問題で、はっきりしましたが、同じことは、都道府県知事にも言え、今回の新型コロナウイルス感染拡大問題で、各都道府県の知事のスキルが明らかになりました。
つまり、一部(数人)の有能な知事を除き、圧倒的に多いのは国の政治家同様に、能力がない、ことが明確になりましたが、その知事を知事の職につけたのは、その都道府県の住民ですので、その地域住民は、その知事の出した結論を受け入れるしかありません。
地域暖房は、その能力のない地方自治体の長である知事が、導入の決定をしますので、能力のない知事では、高額なコストと時間を要する地域暖房システムの導入を躊躇し、導入の可否の結論を出すことを、先延ばしにすることは目に見えています。