地域冷房 推進事業

 
地域冷暖房の導入例(出典:一般社団法人 日本熱供給事業協会)
                   地域冷暖房の導入例(出典:一般社団法人 日本熱供給事業協会)

地域冷房とは 


地域冷房とは、熱をつくるプラントから導管を通し、ある地域内の多数の建物(住宅、商業施設、宿泊施設、文教施設、公営施設など)へ冷水や蒸気を供給して地域全体の冷暖房・給湯を行うシステムのことを言いますが、このネットワークの構築により、いままで、捨てるしかなかった貴重な熱エネルギーを需要者に提供できるようになり、かつ、需要者も自前の冷房システムを導入する必要が無くなるので、地域内で効率的な熱エネルギーの活用ができるようになります。
地球温暖化の進行により、地球規模で冷房需要が高まっていますが、日本では、あまり知られていませんが、世界では、地域を丸ごと冷やす地域冷房の取り組みが早くから始まっており、冬が長く厳しい地域が多い欧米でも、近年、オフィスのOA機器の増加や快適性の追求を背景に、オフィスビルを中心とした地域冷房の需要が増加しています。
課題としては、地域暖房同様に、地中への配管が必要なことから初期投資が大きいことが挙げられますが地域全体で熱利用することでスケールメリットが生まれるので、初期投資は、大きくても最終的には、地域内で使用するエネルギー費用を抑えることができます。

地域冷房プラントから冷熱網


温度を変化させるものは、冷たくても熱という考え方があり、その力を冷熱エネルギーと呼びますが、地域冷房は、この冷熱エネルギーを利用するために熱源プラントで冷水や蒸気をつくり、これを熱媒(熱を伝える仲介物質のこと)として導管によって一つの地域、あるいは都市内にある多数の建物に送り込み、冷房を行うシステムになりますが、地域全体で冷暖房した方がスケールメリットもあり、CO2削減による温暖化防止などの省エネ効果が高まり、河川熱や海水熱など、いままで未利用であった自然エネルギーを使うことで、さらに省エネとなり、より多くのCO2削減に寄与することにあります。
また、冷房設備を1ヶ所にまとめるので、建築物の景観を損なうことがなく、ビルの屋上も自由(屋上農園や庭園、緑地など)に使うことができるようになるので、さらなる、CO2削減と地域環境の向上につながります。

米国・シカゴ

 
米国シカゴ市では、1990年代から地域冷房が始まりましたが、シカゴは、ミシガン湖が近くにある影響で冬は、気温がマイナス15度になるほど寒さが厳しくなり、夏は、一転して気温35度に上昇して非常に蒸し暑くなるのが特徴ですが、シカゴは、
アメリカを代表する商業都市なので、オフィスビルが多く、およそ100棟のビルにOA機器や精密機械が大量にあり、それらを、熱から守るために、冬でも地域冷房の需要があります。
さらに、米国では電力の自由化が早くから導入され、競争が激しいので、電力会社は、夜間の余剰電力を使って電力ピークを平準化し、電力コスト全体を下げるために地域冷房(夜間の余剰電力を利用して氷をつくり、それを溶かして常時1度の冷水にして冷房に使う氷蓄熱システム)を導入しています。
このシステムの特徴は、プラントが街の中心にあることであり、プラント1は、2階が機械室、3・4階が氷蓄熱槽のプラントですが、1階にはスーパーマーケットが入っており、外観も、商業ビルとして街に溶け込んでいますが、供給先に応じた中規模のプラントが街中にあることで、配管の長さが最小限となり、熱のロスが最小限に抑えられて安定性をもたせています。

UAE・ドバイ


ドバイは、アラビア半島のペルシア湾の沿岸に位置するアラブ首長国連邦(UAE)の7つの首長国の1つであり、UAE第2の中心都市ですが、ドバイは、元々石油埋蔵量が少なく、産出量もアブダビの10分の1程度にとどまっています。
昨今、ドバイは、世界一高いビルや、世界最大の人工島の建設など話題にこと欠かない都市ですが、これは政府の国家戦略によるものであり、1990年代後半にドバイ首長は「脱石油」を掲げ、観光・リゾート事業に乗り出したほか、ドバイを、IT事業や金融事業における中東の中心商都にして、石油に代わる産業を創出しようとさまざまな開発を推進しているのです。
夏の最高気温が50度にもなるドバイでは、冷房によるエネルギー消費が総電力消費のおよそ70%を占めるほど大きいので、2030年までに冷房需要の40%を満たすため、水冷却装置をはじめとするさまざまな技術を利用して、世界最大の地域冷房ネットワークが建設されています。
現在、世界で最も高いビルである地上160階・828mの「ブルジュ・ハリファ」でも、周辺の大規模複合施設と合わせて地域冷房プラントがつくられ、シカゴと同様の「氷蓄熱システム」を採用しており、使われているのは下水の再生水で、ブルジュ・ハリファの人工湖への補給水や地域冷房設備への冷却水としても利用されています。

フランス・パリ


フランスのパリでも、1990年代からセーヌ川の水を活用した地域冷房が行われており、
セーヌ川の川沿いにプラントを建設し、河川水を利用して夜間に冷熱をつくり、導管を通じて地域に供給しています。
フランス政府は「川の冷熱を活用することは、ヒートアイランド対策にも有効」と表明しており、冷熱はオフィスをはじめ、銀行やホテルなど約70ヶ所に提供されています。
同地区では、都市ガスを利用した吸収式冷凍機やコージェネレーションの導入により、夏場の電力ピークをカットするとともに、コージェネレーションの排熱を有効利用することにより省エネルギーを図っています。

重要なインフラ

中東や東南アジアのような暑さが厳しい地域では、温熱用の配管の設置を省いて、冷熱用の配管のみを設置することが多いので、熱導管ネットワークの建設コストを安く抑えられる下地があり、これにより、長大な熱導管ネットワークが構築されています。
欧州では、地域熱供給には、暖房が圧倒的に多いですが、OA機器やサーバー類が多いオフィスビルでは冷水を供給する地域冷房もあり、商業施設のみならず、宿泊施設などでの利用も多くみられます。
地域冷房は、熱エネルギーの効率的な活用のほかに、最近、問題になっている地球温暖化の抑制にも非常に効果的なので、中東や東南アジアを中心に、アメリカ・カナダの寒冷地域やフランスなどにも広がりつつありますが、日本では、聞いたことがある人の方が少ないと思います。

原動力は地方自治体

世界各国で、地域熱供給が普及する原動力は、地方自治体であり、その手法は、民間企業と地方自治体が20~40年にわたる契約を締結し、地方自治体は、企業に対して契約期間中の供給義務を負わせる代わりにプラント新設用の土地を無償で貸与し、同時に、建物の開発者に対して熱供給への接続義務を負わせる、といった施策がとられています(当社のPPAモデル事業と100%同じスキームです)。
このように、地域のことは、地域に采配をまかせるのが欧州流ですが、いまの日本に住んでいる私たちから見ると、羨ましい限りですが、日本では、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対しての対応を見てても、一部の優れた首長がいる地方自治体では、地域熱供給(地域暖房や地域冷房)システムの事業化の実現可能性がありますが、圧倒的に多い他の地方自治体では、地方自治体が率先して施策を講じるという意識改革が完了する前に、人口減少による持続不可能な状態に陥るでしょうから、そのような日は、永遠に来ないと思います。

熱と電気を統合するスマートな地域熱供給

デンマークでは、ある地域に熱を供給する場合、熱と電気の両方を供給するコージェネレーションからの熱供給に加え、ごみ焼却場や工場から出る排熱から、最近では、太陽熱まで幅広い熱が配管を通じて送られており、コージェネレーションでは、麦わらや家畜の排泄物などの農業残渣が燃料として積極的に使われ、地域暖房の燃料についても、化石燃料からバイオマスや太陽熱といった再生可能エネルギーの活用へと移行しつつあります。
最近では、電気だけでなく熱の出力も制御できる熱電スマートメーターを活用し、より効率よく地域のエネルギーを活用するシステムも始まっていますが、これは、風力発電で過剰となった電力で、お湯をつくり貯湯槽で熱として蓄えたり、風力発電の増減に合わせて、コージェネレーションの出力を上げ下げして需給の変動を調節するものですが、この方法は、発電と発熱を同時発生させるコージェネレーションならではの方法と言えます。

地域冷房について

地域冷房システムは、地域暖房システム同様に、海外では、その歴史も長く、重要なインフラとして整備されていますが、その理由は、効率的という理由以外にも、いま、大きな問題になっている地球温暖化の抑制効果が高い、という側面も強くあります。
地域冷房は、暖房や冷房、給湯などに使う電気を作るための燃料を、海外に大きく依存している日本でこそ、世界に先駆けて導入すべきシステムですが、日本での普及は難しいと思います。
欧州の考え方は、日本と根本的に違い、その違いは、環境面に対する行動でも明らかです(発言に行動が伴う欧州の国々と口だけで結果に責任を取らない日本)。
つまり、海外の考え方は「自分ができることは自分でやる」「自分の社会的ポジションに見合った責任が自分にはある」というポジティブな自己責任論です。
日本も、自己責任論が強いですが「誰かがやってくれるだろう」「責任を取りたくない」という他力本願論も強いので、ここで、日本特有の様々な問題が生じてきます。
日本では、ネガティブな自己責任論が主流なのは、今回の新型コロナウイルス感染拡大に対する国や政治家の言動や行動を見れば明らかだと思います。
そのネガティブな自己責任論のしわ寄せを食うのは、国民です。
いまの日本の政治家が、国民のことをまったく考えていないことは、今回の新型コロナウイルス感染拡大問題で、はっきりしましたが、同じことは、都道府県知事にも言え、今回の新型コロナウイルス感染拡大問題で、各都道府県の知事のスキルが明らかになりました。
つまり、一部(数人)の有能な知事を除き、圧倒的に多いのは国の政治家同様に、能力がない、ことが明確になりましたが、その知事を知事の職につけたのは、その都道府県の住民ですので、その地域住民は、その知事の出した結論を受け入れるしかありません。
地域冷房は、その能力のない地方自治体の長である知事が、導入の決定をしますので、能力のない知事では、高額なコストと時間を要する地域冷房システムの導入を躊躇し、導入の可否の結論を出すことを、先延ばしにすることは目に見えています。
地域冷房は、地域暖房と違い、年々、厳しくなっている夏や通年での暑さ対策としては、最適なシステムですが、地方自治体の首長の強力なリーダーシップが求められる事業なので、責任を取りたくない首長が多い日本での普及は非常に厳しい事業と思えます。