サーキュラー・(エコノミー)・シティについて |
サーキュラー・エコノミーへの転換は、世界経済の中で過去250年間続いてきた生産と消費の在り方における史上最大の革命となる可能性を秘めていますが、サーキュラー・エコノミーの本質は、市場、顧客、および天然資源の三者の関係性を全く新しい視点で見つめなおすことにあります。
この視点から三者の関係を捉えるとデジタルをはじめとする最先端のテクノロジーは企業に破壊的なビジネスモデルへの変革をもたらし、デジタルに代表される革新的技術は、消費者とのつながりを強化し資産の稼働率を高め市場と連動させることにより、これまでの生産と消費のあり方を根本的に変化させていきます。
デジタル革命とビジネスモデル革新、サーキュラー・エコノミーを融合させることで企業は無駄から富を生み出し新たな競争優位性(CircularAdvantage)を獲得することができるようになりますが、新たな「富」を生み出すと期待されるものは、廃棄物としてのいわゆるゴミだけではなく、企業の会議室や自動車、日用品など現状「働いていない」「使われていない」「空いている」資産や天然資源も含まれており、これまでの「無駄」という考え自体を改め、あらゆるモノには価値があることを認識し、それらを「効率的」に使う以上に「効果的」に活用することが求められ、それが実現できた場合、企業が製品の販売以降も使用済み製品の回収、メンテなどのサービス提供を通じてカスタマー・エンゲージメントを高めることにより消費者とより強いつながりを作ることが可能になります。
このように今後も存続を目指す企業にとって、旧来型のビジネスモデルからサーキュラー・エコノミー型ビジネスへの変化は必須で急務なのは明白ですが、企業の多くは依然として、初めの一歩をどう踏み出せば良いのか苦慮しており、新たなビジネスモデルを試験導入してみたものの将来的に事業拡大が可能な領域とそうでない領域の特定にてこずり、多くの企業は新規事業へのシフトに踏み込み切れていません。
サーキュラー・エコノミー型ビジネスへの転換は「取って作って捨てる」という旧来のアプローチから「取って作って作り続ける」アプローチへのシフトチェンジを意味するので、この転換には時間と努力が必要であり、いつ、どのように変化に着手するか、事前に戦略を策定することが肝要です。
サーキュラー・エコノミー型ビジネスによる競争優位を発揮するための第一歩は、現在の大量生産大量消費モデルを放棄する理由とサーキュラー・ビジネスモデルがもたらすメリットをコアテクノロジーや必要な能力の見極め含めて明確に理解することです。
サーキュラー・エコノミーという言葉が浸透するにつれ、企業のビジネスモデルや消費者の行動など多くの変化が生まれることが予測されますが、企業にとってはいかに早くこの新しい経済の形へと自社のビジネスモデルを適応させ、変わりつつある消費者の需要に応えていけるかが競争の鍵になりますが、サーキュラー・エコノミーの実現には、メーカー・小売・回収・リサイクル企業など幅広い業種の連携や製品回収・リサイクルでは消費者の協力など業界や立場を超えたあらゆる人々の協働が必要不可欠です。
しかし、サーキュラー・エコノミーの推進により様々な異業種・異分野連携が生まれ地域のつながりの再構築やオープンイノベーションにつながることが期待される反面、サーキュラー・エコノミー型のビジネスモデルは従来のリニア・エコノミー型ビジネスモデルと比較してコストがかかり企業や消費者がサーキュラーな選択をするインセンティブがないので税制面での優遇などの政策的介入が必要という指摘もありますが、常に成長しつづけることを目指す企業にとって、サーキュラー・エコノミーを活用した競争優位性の確立は無視することのできないテーマであり、今こそが第一歩を踏み出す絶好のタイミングです。
現代社会では、世界規模で大量消費社会の限界が見え始めており、近い将来、主要な資源が枯渇し必然的に、これまでの消費型経済からの転換が迫られます。
また、大量生産・大量消費・大量廃棄が引き起こしてきた問題の解決策が、循環型経済であるサーキュラー・エコノミーであることは間違いのないことなので、実際に、多くのファストフード店やコーヒーショップではプラスチックストローが廃止され、チョコレートの個包装がプラスチックから紙パッケージへと変更されるなどの「脱プラスチック」の動きも、サーキュラー・エコノミーの一環です。
今、世界中の国々が、躍起になって取り組んでいるサーキュラー・エコノミーへの変換やサーキュラー・(エコノミー)・シティ構想とは、突き詰めていけば、日本の明治時代以前の社会構造(全ての面においての自給自足・循環型社会)とも言えるので、日本の企業に求められているのは、効率性のみを追及する西欧化ではなく、自身の先祖が培ってきた「古き良き時代の日本」への回帰かもしれません。