深刻化するワーキングプア問題 |
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深刻化するワーキングプア問題 |
ワーキングプアとは、正社員または非正規社員としてフルタイムで働いているのにかかわらず、生活保護の水準以下の収入(概ね200万円以下)しか得られない低所得者層を指す言葉で、1990年代にアメリカで生まれた言葉ですが、日本語で、働く貧困層とも呼ばれています。
日本では、バブル崩壊以降、賃金水準の低い非正規労働者の急激な増加を背景に使われるようになりましたが、景気が回復基調に入った2003年以降も増え続けており、2006年以降は1000万人を越える高い水準で推移しています(2017年は前年から1万5千人増の1132万3千人)。
これは日本の労働者人口の約1/4に相当し、ワーキングプア問題が大きな社会問題となってきています。
ワーキングプアの実態 |
2012年には働いている人がいる世帯のうち1/10近くが、ワーキングプアという結果になり、この20年の間に、その数は大幅に増えています。
ワーキングプアの増加には、2つの大きな山があり、1つ目の1997年~2002年にかけては、労働市場の規制緩和や自由化が進められ、日本型の終身雇用が急速に減少し、パートや契約社員といった非正規雇用が急増した時期が、この時期になります。
2つ目の2007年~2012年にかけては、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災が相次ぎ職を失う人が大量に出た結果、非正規雇用が大幅に増加して収入の格差が拡大しました。
ワーキングプアの生活 |
・家具や家電、衣料品などの購入を我慢している
年収200万円の手取りは月額で約15万円ほどですので、家賃や食費、光熱費などを除くと手元に残る金
額はわずかで、家具や家電、衣料品の購入まで回らないという意見が多くあります。
・食費や交際費も節約している
一番減らしやすい出費は、食費ということで、1日の3食分を1回のランチ代にも満たない金額でやりく
りしている人が多くいます。
・実家暮らしで親に頼っている
実家暮らしをしている人も多く「親の介護が必要になったら生活していけるか心配」という、将来への
不安を持ちながら生活している人が多くいます。
・将来が不安
日々の生活に精一杯であり「貯金はできていない」という人が大半であり「病気や怪我で働けなくなっ
たらたちまち生活できなくなる」「今の生活を維持するので精一杯。5年後、10年後、先のことまで考
える余裕がない」という切実な不安を抱えている人も多くいます。
広がり続けるワーキングプアの波 |
・高学歴ワーキングプア
日本の企業は大学の新卒を重んじる傾向があるので、卒業と同時に就職できれば問題は少ないですが、
新卒時に就職できなかったり、大学院卒となった場合、就職するのが難しくなります。
また、弁護士や税理士などの難関とされる国家資格を有しているのに、ワーキングプアに陥ってしまう
人も多くおり、特に弁護士は、法科大学院が多数設置されたこともあり多くの弁護士が誕生しましたが
弁護士としてやっていける人はわずかであり、高い費用と多くの時間をかけて資格を取得したにも関わ
らず、その能力を活かすことができていないケースが多く見受けられます。
・公務員定数削減と非常勤職員増加
公務員にも、ワーキングプアが増えており、実際に、地方公務員の数は1994年をピークに減少し続けて
いますが、公共サービスの対象はむしろ拡大し、人手が必要となっており、それを補うために増加して
いるのは非正規職員と民間委託です。
その結果、仕事内容は正規も非正規も変わらないのに収入や保障などの待遇が大きく異なるという問題
が生じてきており、非正規職員が特に多いのは、事務職、保育士・幼稚園教諭、学校用務員、学校給食
関係職員、看護師・保健師等です。
また、非正規職員は任期の上限があり、本人に能力や意欲があっても契約期間の満了とともに退職する
しかなく、これにより、生活が不安定になってしまいます。
・貧困の固定化
増え続けるワーキングプアは、貧困の連鎖と固定化という新たな問題を生じつつあり、ワーキングプア
世帯の子どもは、低学歴のまま就職することになり、そうすると、高い収入は望めず貧困が親から子へ
と連鎖することになり、そこから脱することはますます難しくなり、貧困が世代を超えて固定化してし
まいます。
また、働く世代が貧困化すると社会保障の費用増大や経済の停滞を引き起こし、子どもや高齢者にもそ
の影響が及び、将来的には、国の活力を低下させる恐れもあります。
ワーキングプア増加の背景 |
・非正規雇用の増加
2004年の人材派遣業務の自由化で、製造業でも人材派遣が認められるようになって以降、多くの企業が
人員調整のしやすい非正規労働者の割合を増やし続けており、就職氷河期の影響により新卒での正社員
採用を逃した人たちが、その後も、派遣などの非正規労働者として働き続けていることもワーキングプ
ア増加の1つの要因と考えられています。
ワーキングプアから抜け出すための対策 |
a.最低賃金の見直し
都道府県ごとに、最低賃金が定められていますが、この最低賃金は、最低生活費を下回っており、2015
年時点で最低賃金が最も高い富山県でも最低生活費の約9割となっており行政が定めている最低賃金で
は、生活を維持するのが困難になってしまいます。
この状況は、ワーキングプア率の高い沖縄県、大阪府、京都府で、特に顕著であり、これらの府県では
いずれも、最低賃金が最低生活費の7割台となっていますので、最低賃金が最低生活費を上回るように
見直す必要があります。
b.勤務形態の多様化
どこからでもインターネットに接続できる環境が整備されたことや、パソコン・スマートフォン等のIT
機器が高性能化したことにより、オフィスワークはどこでもできるようになり、社外での勤務、いわゆ
るテレワークが広がりつつあります。
特に、子育てや介護中の人は短時間勤務や在宅勤務などの柔軟な勤務形態を望んでおり、多様な勤務形
態を導入することで働き方の自由度を上げる必要があります。
c.介護・子育てサービス提供拠点の拡充
家庭内に介護や子育ての必要がある場合、働きたいという意志があっても就労の機会は限られますが、
このような人たちが働くためには介護や子育てサービスを提供する拠点(介護施設、保育園等)を拡充
する必要があります。
特に、保育園については、都市圏を中心に待機児童が多くいるので施設の拡充が必要です。
d.介護・子育てサービス提供時間帯の改善
介護・子育てサービスが提供されても、その時間が短いために働く時間を短縮せざるを得ない場合があ
りますので、特に、早朝・夜間・土日祝日のサービス提供が必要になってきます。
e.最先端技術の活用
介護や子育てサービスも多くの人手に頼っていますが、専門的な技能が必要であるにも関わらず給与が
低いため、人手が確保しづらい状況にありますので、情報通信技術や人工知能(AI)といった最先端技
術を活用していくことが必要です。
深刻化するワーキングプア問題について |
ワーキングプアを減らすための対策は、ワーキングプアに陥っている人が自立して生活できるように、働く機会を増やしたり賃金の水準を引き上げること、そして、本来であれば、国や地方自治体が行うべき介護や子育てを担っている家庭のサポートを充実させるなどの誰もが安心して働ける環境を整えることが重要です。
そのためには、行政や企業、地域社会が協力して取り組んでいく必要がありますが、都道府県ごとに定めている最低賃金は、最低生活費を下回っており、2015年時点で、最低賃金が最も高い富山県でも最低生活費の約9割しか得られず、行政が定めている最低賃金では、国民は、生活を維持するのが困難になっている事実を1日も早く地方自治体は気づくべきです。
これは、ワーキングプア率の高い沖縄県、大阪府、京都府で、特に顕著であり、これらの府県では、いずれも最低賃金が最低生活費の7割台となっており、これらの地方自治体は、行政の最低限の義務(国民の生きる権利・生存権)をないがしろにしていると言われても仕方がない状態を放置しているので、地方自治体としての存続意義自体が無いです。
これは、税金と称して搾取だけして、住民の生きる権利を守る義務を放棄しているのですから当然です。
これらの地方自治体は、最低賃金が最低生活費を上回るように1日も早く見直す必要があり、それらの地方自治体に住んでいる住民も、近隣の福利厚生が充実している地方自治体に引っ越すなどの自衛策が必要になってきます(沖縄は物理的に難しいですが、大阪や京都なら十分に可能です)。
ワーキングプア問題は、個人では対処に限界があるので、行政(地方自治体)は、地方自治とは、そこに住む住民に対してサービス(福祉)を提供する組織であるという初心に帰る必要があり、最低賃金を上げると地元の企業が立ち行かなるという物事を行わない理由として便利な言葉を捨てて、住民目線での政策を行うべきであり、最低賃金を上げて倒産するような企業は、違う目線で見た場合、早めに市場から撤退して貰った方が良いこともあります。