首都直下巨大地震

 
 
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首都直下巨大地震とは

首都直下巨大地震とは、関東地方の南部(神奈川県・東京都・千葉県・埼玉県・茨城県南部)俗にいう首都圏で歴史的に繰り返し発生しているマグニチュード7クラスの大地震を指す総称であり、東京に焦点を絞った場合は、東京大震災などとも呼ばれる日本で想定される都市直下型地震の一つになります。
首都圏は、北米プレートの下に太平洋プレート、その下にフィリピン海プレートが入り込む場所なので、北米プレートが跳ね上がれば、津波を伴う大地震が起きると予測されており、最近、頻繁に発生している茨城県南部、千葉県、東京湾の地震は、首都直下巨大地震の予兆と見られています。
また、三つのプレートの間や内部で巨大地震を起こす可能性もあり、そうなった場合、プレート間のバランスが大きく崩れ、巨大地震が連発して首都圏を襲う可能性も指摘されています。 

8つの巨大地震

 
                                  原典:内閣府・出典:NHK

2014年、政府の地震調査委員会が示した「今後30年で70%」という数字には、過去に発生した8つの大地震を根拠にしており、これらは、1703年の元禄関東地震(M8.2)と1923年の大正関東地震(M7.9)の間に発生しており、この8つの大地震は、関東南部の沖合にある相模トラフとフィリピン海プレートのプレートの境目「相模トラフ」で発生した巨大地震ですが、首都直下巨大地震に、特に、類似しているとされるのが1855年の安政江戸地震です。この時期は、ペリー提督が、黒船で来航した2年後の第13代将軍 徳川家定の時代ですが、当時の江戸の広い範囲が激しい揺れに襲われ、特に、いまは超高層ビルが建ち並ぶ千代田区丸の内、墨田区、江東区、横浜市などで揺れが強かったとされており、この時には、およそ1万5,000軒の家屋が倒壊して火災も発生し、死者は7,000人以上に上ったとされています。
首都圏では、過去220年の間に大地震が8回発生しているので、単純計算では27.5年に1回の頻度になりますが、これを、地震学で用いられる将来予測の計算式に当てはめると「今後30年以内に70%」という発生確率が導き出されます。
また、この220年間を分析すると地震活動の「静穏期」と「活動期」があり、期間前半の100年間は1782年の天明小田原地震だけですが、期間後半は、関東大震災の前年とその前年に合わせて2回、それに1894年から翌年にかけては3回の大地震が相次いで発生しており、関東大震災から100年近くが経過した、いまは、これから活動期に入ると推測されています。
さらに歴史を遡ると、いまから1100年余り前の9世紀には、869年「貞観(じょうがん)地震」、878年「元慶(がんぎょう)関東地震」、887年「仁和(にんな)地震」が発生しており、このうち「貞観地震」は、東北の太平洋沖合で起きたマグニチュード8を超える巨大地震であり、沿岸に大津波が押し寄せた2011年の東日本大震災に類似していると言われています。
注目すべきなのは、その9年後で、当時の相模国、武蔵国(いまの関東南部)に激しい揺れをもたらした元慶関東地震(=「相模・武蔵地震」)が発生しており、貞観地震を、2011年の東日本大震災と仮定すると、首都直下地震にあたる元慶関東地震の発生した9年後は、今年、2020年になりますが、これらは推測ですが、歴史的な事実でもあるので、首都の中枢機能に大きな影響をもたらし、深刻な被害が想定される首都直下地震が、これから先の時代では「いつ起きてもおかしくない」と考えて備えるべきです。

全国地震動予測地図

 政府の地震調査委員会が行った「全国地震動予測地図」の最新改訂版では、今後、震度6弱以上の大地震が起こる確率が、横浜市役所が78%(前回66%)、さいたま市役所が51%(同30%)、千葉市役所が73%(同67%)となっており、東京都庁も46%(同26%)と大幅増となっています。
この地震の発生確率の上昇は、首都圏に限った話であり、たとえば、南海トラフでは、近い将来、M8クラスの地震が連動して発生する巨大地震が起きる可能性が指摘されていますが、その被害を受けると想定されている地域の発生確率を見ると静岡66%(前回65%)、津62%(同65%)、和歌山60%(同56%)、徳島69%(同68%)、高知70%(同70%)と、全体的に高い数字ながらも前回想定と、ほぼ横ばいなので、今回の結果は、はっきりと〈関東=首都圏に危険が迫っている〉と言っているのと同様です。
この数値の跳ね上がりについて、たとえば、これらの数値が、天気予報の降水確率だとした場合「今日の降水確率は78%です」とか「今日の降水確率は73%です」と言われたら、多くの人は「今日は雨」と判断して傘を持って出かけるのが普通の行動と言えますが、これが、今回の予測に当て嵌めると「今後30年間の内に震度6弱以上の大地震が起こる確率は78%です」と言われたら「我々はこれから30年以内に大地震に遭遇するんだな」と判断するのが普通だと思いますが、何故か、日本人は、降水確率には敏感ですが、地震の発生確率には鈍感です。
また、伊豆大島の噴火と関東大震災の関係が注目されており、いま、小笠原諸島の端にある西之島が噴火を続けて規模の拡大を続けていますが、それに連なる伊豆大島で火山活動が活発になると相模トラフの活動も活発になる傾向があることが分かっているので、今後、伊豆大島が、噴火をするようなら、それは、首都直下巨大地震発生のゴングとも取れるので、注意して観測を続ける必要がある地帯になります。

下町でも山の手でも火災

新宿や渋谷に代表される首都圏の商業地域の大通りは、鉄筋コンクリートのビルが多く建ち、一見、安全性が高いように見えますが、これは大いなる錯覚であり、大きなビルが並んでいるのは区画を囲む周辺部分だけであり、表通りから一歩、区画のなかに足を踏み入れると、古い木造の店舗などが密集している場所が非常に多いので、首都直下大地震が発生すると、こうした区画のなかにある木造の建物が倒壊し、やがて火が出て、生き埋めになった人を巻き込みながらあたりを焼き尽くす可能性が高いです。
このように、これだけ建物が密集した首都圏で、一番、恐ろしいのは地震による都市の破壊ではなく、それに続く大火災ですが、関東大震災の記憶から「下町より山の手のほうが安全」と思いがちですが、関東大震災の時に、山の手で死者が少なかったのは、住んでいる人自体が少なかったからであり、大正時代に山の手と呼ばれていた西側の武蔵野台地などとの境界にあたる崖地の地域や本来は川沿いの谷地である場所にもいまでは、無数の木造家屋が建っています。
これらは、1960年代頃に建てられた一戸建てが多く子供が独立した高齢者夫婦や単身高齢者が住んでいますが、周囲の道は入り組んでいて狭いので、建物や塀が倒壊すれば、たちまち閉じ込められて、そのまま火災に巻き込まれる人が続出します。
これにより、
焼失する建物の数は、最悪のケースでは約41万棟と予測されており、特に、リスクが高いのは山手線の外側から環状7号線の間に多い木造住宅が密集して広がる地域、いわゆる木密地域です。
これらの地区には、老朽化した建物や道路が狭い、行き止まり、などの機能障害を生じている箇所が多く特に、深刻な火災の被害が想定されているのは、練馬区、杉並区、中野区、世田谷区、大田区、江戸川区、葛飾区、足立区で、こうした地域では、四方を火災で取り囲まれ避難が遅れると危険な状況になります。また、同時多発しているケガ人や火災の対処に追われて救急車や消防車は「絶対」に、あなたの元には辿り着けないので、区画のなかの木造家屋が倒壊したら、周辺部のビルに勤めている人たちは、互いに助け合う救助部隊として行動することが重要になります。

火災旋風

都市の地震で起きる火災の1つに「火災旋風」があり、火災旋風は、ときに高さ200mを超える巨大な炎の渦が、竜巻のように家屋や人を吹き飛ばし、文字通り街を焼き尽くす現象なので、単なる火災と違い、風速60mにも達する凄まじい風で、火の粉を遠くまでまき散らし、もともと火種のなかったところにまで延焼を拡大させるなど甚大な被害をもたらしますが、これは、どの火災現場でも発生する可能性があり、動いていく方角を予測することは不可能とされているので、人が密集する東京のような大都市では、火災旋風の発生が大きな人的被害を招く恐れがあり警戒が必要です。
この火災旋風は、東日本大震災でも目撃されており、震災から3日後に大規模火災が起きた気仙沼市で、突然、推定の高さ230m幅130mにもなる巨大な火の渦が現れました。
ほかにも、火災旋風は、第二次世界大戦の空襲や山火事など世界各地で多数目撃されており、1923年の関東大震災では、地震発生の1時間後から34時間に亘り、110個の火災旋風が目撃されており、横浜市では30個が目撃され、火災旋風を起因として「3万8000人が命を落とした」と言われています。
また、火災旋風には2つのタイプがあり「炎を含む火柱状の渦」と「炎を含まない渦」があり「炎を含まない火災旋風」も、竜巻のような風で砂ぼこりや煙などを巻き込んで黒い渦になると考えられており、甚大な被害をもたらす危険性があり、大規模な火災の風下側に「黒い竜巻状の火災旋風」が発生する場合もありますが、夜間は、火災旋風自体が黒く見えにくいので、接近に気付かず、深刻な人的被害を引き起こす恐れもあります。

同時多発火災

内閣府の被害想定によれば、東京消防庁は、消防車500台近くを有する全国一の消防力を誇りますが、首都直下地震では、約2000件の火災が発生し、そのうち約600件は、消火が間に合わず大きな火災になると推測されており、これは、消防力を遥かに超えた「同時多発火災」が発生することの表れです。
とくに、このリスクが高いのが木造住宅が密集している「木密地域」であり、木密地域は、道幅も狭く近隣の建物に火が燃え移りやすく、最悪なのは、こうした木密地域が都心を取り囲むように広がっており、東京の木密地域の面積は、東京ドームおよそ2600個分(1万3000ヘクタール)にもなり、東京消防庁のシミュレーションでは、杉並区の住宅街の1戸で出火した場合、出火から76時間後には1万3000棟にも燃え広がる結果が出ており、このような1件の火災で延焼に巻き込まれる可能性のある建物群を「延焼運命共同体」と呼び、東京には3000棟以上が燃える「延焼運命共同体」が70ヶ所ほど存在します。
また、木造家屋ではなくても、耐火造建物が地震の揺れで壊れて延焼を拡大させるケースもあり、たとえば「杉並区とその周辺の被害想定は400人余りの犠牲者」とされていますが、実際には、その10倍近い死者が出るケースも予測されます。
この原因は「逃げ惑い死」であり、これは、住民が避難する途中で火災に巻き込まれて死亡してしまう現象ですが、火災から逃れるために「広域避難場所」に向かった際に、避難場所の近隣まで延焼が拡大していて引き返そうとしても、後ろから大勢の避難者が押し寄せ身動きが取れなくなり「逃げ惑う」うちに、炎にまかれ死傷するというケースが、これまでの想定以上のことが起こり得るというシミュレーション結果も出ています。

群衆雪崩

首都圏には、老朽化したビルも数多く存在するので、地震により根元から横倒しになり幹線道路を防いだり湾岸地域の埋め立て地にあるコンビナートの燃料タンクなどが地盤の崩壊で傾いて次々に爆発・炎上し、河川上の橋や高架橋などが崩落し、交通網は寸断される可能性も十分になり、そうなった場合、多くの人々は、逃げ場をなくします。
いま、危機が迫っている首都直下地震ですが、大量の帰宅困難者も予想されるなど、過度な人口密集地域である東京だからこそ被害が拡大する恐れがあります。
通勤通学の途中や買い物で外出中など、会社や学校、自宅などから離れたところで地震と遭遇するのは、帰宅困難の中でも最悪の状況ですが、通勤・通学時間帯の朝8時に首都直下地震が起きれば、こんな事態に陥る人たちが約200万人も発生します。
首都直下地震が起きた際、帰宅困難者は、1都4県で800万人に達すると予測されており、街にあふれる650万人とも予測される帰宅困難者が引き起こす被害が「群衆雪崩」ですが、これは、歩道橋や地下街への入り口のような階段の近くや急に道が細くなった路地などの歩行者が密集しやすい場所で発生しやすく突発的な些細な出来事を起因として群衆が一気に動きだし、そのうちの誰か1人でも倒れた場合、後ろの人たちも次々と、雪崩を打つように折り重なって転倒する「将棋倒し」状態を引き起こします。
シミュレーションでは、地震発災1時間後には、丸の内、新宿、渋谷、赤坂など、東京の至る所で過密状態が発生する結果になっており、首都直下地震では、大きな道路と道路が交わる交差点、橋、駅、地下街、ビル街から出てくる人たちが集中やすいので、都心各地で同時多発的に群衆事故が発生するリスクが高くなります。

地震洪水

地震洪水とは、河川の堤防が地震による揺れや液状化で致命的なダメージを受け、川の水が、市街地に流れ出す現象を言いますが、被害が大きくなる恐れが特に高いのが、いわゆるゼロメートル地帯、東京東部や名古屋などに広がる地盤が海水面よりも低い土地を襲う地震であり、例えば、普段は堤防で守られていますが、東京湾に面したゼロメートル地帯には176万人が暮らしていますが、堤防が地震の繰り返しで破壊されることにより、市街地は、地震と同時に地震洪水にも襲われる恐れがあり、しかも、ゼロメートル地帯は雨が降っていなくても浸水が一気に広がるので避難が遅れれば数万人の命が危ないとも言えます。

複合災害

大地震が発生するタイミングが、運悪く台風などで川の水位が高い時期だったり、あるいは地震で堤防が傷んだあとに大雨が降ったりすることも十分考えられるので、このような「複合災害」では、より深刻な被害が起きます。
全国で発生した過去の地震と水害で堤防決壊が発生した箇所の位置関係を分析した研究によれば「地震の震度が大きかった地点と水害による堤防の決壊地点が重なるケースが多い」と言われており、もし、首都直下地震が、台風などで川の水位が高い時に発生し、都心近くを流れる荒川が決壊したら、内閣府が水害を想定して公表した資料によれば、地下鉄のトンネルにも流れ込み、17路線の81駅が水没状態になるとされています。
ほとんどの地域がゼロメートル地帯にある江戸川区では、ハザードマップで「ここにいてはダメです」と強い言葉で危機を呼びかけており、区内のほぼ全域に浸水の恐れがあり、しかも、1週間から2週間に亘り、水が引かないと考えられています。
同じくゼロメートル地帯の葛飾区では、住民が自主防災組織を作り、避難や救助に使う船外機付きのゴムボートを用意して地震による水害発生に備えており、ひとりでは、迅速な避難が難しいお年寄りには、赤い旗を配り、避難するときに助けを求める目印として使ってもらう独自の取り組みも始まっています。
たとえば、2019年10月の台風19号の時には、葛飾区では、避難勧告が出ていない地域でも7500人が自主的に避難しており、今後さらに「災害の当事者意識」を地域に根づかせ、命を守る行動を各自がすぐに取れるよう誘導していきます。

一番危険な横浜市

横浜市は、人口約374万人を擁する大都市であり、街の象徴・横浜ランドマークタワーや歴史的建造物・赤レンガ倉庫などの定番スポットを求めて観光客は年間3420万人を超えますが、そう遠くない未来、この横浜市に震度6以上の大地震が襲い掛かります。
政府・地震調査委員会が公表した「全国地震動予測地図」によると、横浜市で、今後30年以内に震度6弱以上の大きな地震が発生する確率は、なんと82%です。
特に警戒されているのは、マグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震ですが、ほかにも、相模トラフ地震、首都圏直下巨大地震の3つの巨大地震の危険にさらされており、横浜市は、それらの巨大地震が起きた場合に備えて、最悪のパターンを想定した被害予測を出していますが、その被害予測は、避難者数は約57万人、火災による建物焼失棟数は約8万棟と甚大な被害を予測しています。
首都圏直下巨大地震は、内陸の活断層で起こる巨大地震であり、これが30年以内に発生する確率は70%と言われていますが、東京南部が震源地だった場合、横浜市は、特に、大きな被害に遭い、東京湾沿岸部にある多数の火力発電所は、揺れや液状化によって支障が出る可能性が高いので、市内全域が、長期間停電し、交通・通信インフラはすべて止まります。
また、東京湾の入り口にある海溝が相模トラフですが、このトラフの周辺は、地震多発地帯としても有名で、このトラフを起因とする相模湾から房総沖にかけて発生する相模トラフ地震は、周期的に日本に甚大な被害をもたらしており、死者10万人超に達した1923年の関東大震災も相模トラフが引き起こしており、認知度は低いですが、この大震災震災で、一番被害が多かったのは横浜市です。
いずれの巨大地震が起こっても建物が倒壊し、木造住宅が密集する横浜市南部では火災が広がり、数十万人を超える人々が、安全な場所を求めて横浜の街を彷徨うことになります。
しかも、巨大地震の激しい揺れの後に横浜市を襲うのは津波であり、気象庁の想定では神奈川県には最大10mもの津波がやってくるので多くの人で賑わう「みなとみらい」は一瞬にして激流に飲み込まれます。また、横浜市内には、58もの河川が流れているので、津波が川を遡上し街中で氾濫を引き起こす危険もあるので、海から離れた場所でも油断はできず、横浜市には古い橋が多く存在するので、これらの橋が地震や津波による大量の水の逆流に耐えられる保証はなく、橋が崩落などした場合、交通インフラが麻痺し、多くの人が孤立することになります。
このように、横浜市を襲う巨大な自然災害ですが、自然災害の極めつけは、富士山の大噴火です。
富士山は、南海トラフ巨大地震と連動して噴火する可能性が高いとされており、
横浜市からは100km以上離れているので直接的に、溶岩流や火砕流の被害に遭うことはないですが、内閣府による横浜市の予測降灰量は、およそ10cmなので大量の火山灰が数週間にわたって街に降り注ぎます。
この降灰により、
電気・水道・ガスなどのあらゆるライフラインはストップし、街中には行き場をなくした何十万もの横浜市民でごった返すことになります。

避難物資

 南海トラフ巨大地震のような大地震が起こった場合、帰宅先を失ってしまった被災者には避難所生活が待っており、そんな時、命綱となるのは水や食料といった備蓄になりますが、これが非常に危うい状態であり、横浜市の公的備蓄は、市内に459ヵ所ある指定避難所などにクラッカーや保存食を合計で92万食、保存用のビスケットを73万食、350mlの水を188万本用意されていますが、横浜市の人口は約374万人なのでこれでは、市内人口の半分以下の人数分の1食分しかないので圧倒的に不足しています。
横浜市も近い将来に来る巨大地震に備え、かなり高い意識を持っていますが、裏を返せば、横浜市の人々にとって巨大地震は、それほど差し迫った危機とも言え、この危機意識レベルは、東京都内の国民も見習うべきですが、その横浜市を持ってしても、避難物資や品所の整備が、まだまだ足りていません。
具体的には、震度7だった熊本地震では事前想定を大きく上回り、結果的に855ヵ所も避難所を開設しているので、横浜市で考えると、観光で滞在する人も含めれば昼間人口は500万人超なので、このタイミングで、巨大地震に襲われたら、500万人超が一挙に避難することになります。
そうなると、横浜市が想定していたよりも必要な避難所の数は遥かに多くなり、結果的に、地元住民は避難所に入れず救援物資も不足し自給の生活を強いられることになります。
また、横浜駅周辺は、もっとも液状化の被害が深刻なエリアであり、しかも、巨大な地下街があるので浸水が始まれば水没する可能性が非常に高い場所なので、そこに備蓄されている救助物資は、全く当てにならない可能性があります。
その中でも、一番危険視されているのが、
古い木造住宅が密集する横浜中華街であり、ここは、有名な観光スポットですが、巨大地震発生時には、消防車が入れないほど道が狭く入り組んでいるので、街がパニック状態になり、火災による大量の死傷者を生み出す場所に変わり恐れがあります。
また、観光スポットが密集している湾岸エリアは、ほとんどが埋め立て地なので液状化の危険があり、赤レンガ倉庫などは特殊な耐震補強工事が行われていますが、耐震化された建物でも液状化で地盤が崩れれば倒壊する可能性はあります。

海溝型地震

首都圏に住む人々は、自覚がある・自覚がないを問わず、世界有数の地震多発地帯の上に住んでおり、日本で起きる地震には2種類あり、1つは海溝型地震(東日本大震災(2011年)を起こした東北地方太平洋沖地震や、これから起きることが警戒されている南海トラフ巨大地震)、もう1つは内陸直下型地震(1995年に起きた阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)や2016年に起きた熊本地震)です。
この2種類の地震は起きるメカニズムが異なっており、海溝型地震は、日本列島を載せているプレートに海洋プレートが衝突して起きるので、プレートが、毎年4~8㎝という速さで動くのに合わせ、次第に地震を起こすエネルギーが溜まり、プレートが我慢できる限界を超えたら大地震が起きるので、毎年、地震の発生が近づくことになります。
起きる場所は、海溝の近くに限定され多くの場合は太平洋岸の沖であり、この地震は、マグニチュード8クラスか、それ以上であり、実際に、2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震はマグニチュード9で、甚大な津波の被害を多くの県に引き起こしています。
最近、頻発している茨城県を中心とした地震もフィリピン海プレートの先端部が首都圏の下を抜けて、ここまで達していることで起きていますが、もともと、茨城や千葉は、フィリピン海プレートの先端近くにあるので、地下で歪みがたまりやすい場所であり、地震が頻発することは、江戸時代以前から知られていたことです。

内陸直下型地震

内陸直下型地震は、日本列島を載せているプレートがねじれたり、ゆがんだりして起きるもので、いつ、どこで起きるか、は予測できず、日本のどこにでも起きる可能性があります。
内陸直下型地震は、人間が住んでいるすぐ下で起きるので、マグニチュードの割りに被害が大きくなるのが特徴であり、実際に、マグニチュード7.3の阪神・淡路大震災では6400人以上の犠牲者を出し、2018年9月のマグニチュード6.7の北海道胆振東部地震や同6月のマグニチュード6.1の大阪北部地震でも大きな被害が生じています。
この内陸直下型地震は首都圏全域で起きる可能性があり、実際に、小さい地震でしたが2016年に東京・杉並区で地震が起きており、マグニチュードが大きい地震なら相当数の被害を生じていた筈です。
つまり、周辺を含めて3000万人が生活している首都圏は、日本でも特別に「地震が起きる理由が多い」場所であり、地震多発地帯であることを知らずに、首都圏に住み着いてしまったのが日本人と言うことになります。
気象庁が、全国に地震計を整備した統計では、1922年から2009年までの東京の震度1の地震は3991回で、全国的にも地震が多い北海道・浦河の3592回よりも多いという結果が出ましたが、浦河は、第2次大戦後、震度5超の地震に16回も遭っている町であり、日本一震度5を体験した町ですが、その町よりも、東京は地震が多く、2011年に起きた東北地方太平洋沖地震の余震などで、東京で感じる2010年代の数字は、さらに跳ね上がっています。
首都圏では、内陸直下型地震も、よく起きており、19世紀だけでも、1855年の安政江戸地震(推定マグニチュード7.1)、1894年の明治東京地震(マグニチュード7.0)、1895年の茨城県南部地震(マグニチュード7.2)、1921年の茨城・竜ヶ崎地震(マグニチュード7.0)、1922年の神奈川・浦賀水道地震(マグニチュード6.8)、1924年の神奈川・丹沢地震(マグニチュード7.3)、1931年の西埼玉地震(マグニチュード6.9)と大型の地震が発生しているので、今この瞬間に、内陸型直下地震が起きても、おかしくありません。
内陸直下型地震は、連続して発生する傾向もあり、実際に、2016年の熊本地震は震度7が2回、2004年にマグニチュード6.8の新潟県中越地震、その3年後に近くでマグニチュード6.8の新潟県中越沖地震が起きていますが、江戸時代は、いまよりも、その件数は多く、平均でも、マグニチュード6以上の地震が6年に1度のペースで発生していました。
しかし、近年では、関東大震災を引き起こした関東地震(1923年、マグニチュード7.9)以来、一転して首都圏直下の地震が非常に少ない状態が、1世紀に亘り続いており、その間に、東京で震度5を記録したのは4回しかないですが、この静かな状態が、いつまでも続くことはないので、いまの首都圏の状態は「嵐の前の静けさ」と言えますが、東日本大震災後、首都圏は、約90年間の静穏期間が終わり、いわば「普通の状態」、つまり「今までよりは活発な地震活動に戻る」と考えるのが地球物理学的には自然であり、実際に、首都圏では、震度4以上の地震の発生数が2017年から2018年で倍増しており、これは東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)が、日本列島の地下にある基盤岩を東南方向に大きく動かしたからであり、このため、各所の基盤岩に生まれたひずみが地震リスクを高めています。

首都直下巨大地震について


近年の日本では、全国各地でマグニチュード6以上の地震が相次いでおり、国の中央防災会議でも、マグニチュード8を超す南海トラフ巨大地震が、今後30年以内に7~8割の確率で起きると予測(地震学では100%起こると断言しているのと同じ。発生時期が、数十年と幅が広いのでパーセントが低いだけ)しており、この巨大地震は、いま、このタイミングで発生しても何ら不思議ではないのです。
この巨大地震が発生すれば、それに連動して、
首都直下巨大地震の発生、富士山の大噴火までが想定されており、ほかの地震帯が連動する可能性もゼロではありません。
このように、
マグニチュード7クラスの
首都直下巨大地震は、いつ発生するか分からない巨大地震でありその発生は、私たちが生きている期間に確実に発生すると予測されていますから、順番が逆になって、首都直下巨大地震の発生、それに連動して南海トラフ巨大地震が発生、ということも十分に可能性があるので、被害が想定されている
首都圏から静岡、名古屋、大阪、高知と言った太平洋岸の住民は、少しでも早く内陸部に移住するべきです。
しかし、この移住問題は、個人や民間企業レベルで実現できる話ではないので、国が主導して太平洋沿岸の都市を大改造することが求められますが、日本の政治家は、泣きたくなる程、その思考レベルが低く、かつ、自身の利権と保身のことしか考えていないので、大局的な思考は、100%持ち合わせていないので移住問題の解消は、この国には100%期待できません。
それでは、次の頼りは、地方自治体となりますが、これも、国と似たり寄ったりで、そもそもが、太平洋沿岸部にある地方自治体の多くが、国からの交付金(一般家庭に例えれば、国が親で地方自治体は子供)頼りなので「財源がない」という理由で、移住問題の解消は、地方自治体にも100%期待できません。
東日本大震災の時の大津波が民家やビルをのみ込み、自動車を木の葉のように流した映像は、国民の目に鮮明に焼き付いている筈ですが、日本人特有の忘れやすい体質により「遠い過去の出来事」という形で、あの惨状が風化しているように思われます。
表現はきつくなりますが、ほとんどの日本人は、自分の目の前に甚大な自然災害が現れて、自分が、その立場(被災者)にならないと、その基本的な思考回路は治らないのかもしれませんが、自分の目の前に、その惨状が現れたときに気が付いても手遅れです。
首都直下巨大地震が発生した場合、津波による被害よりも、火災による被害の方が大きいと予測されていますが、どちらが原因であっても人的被害は甚大であり、
東京の昼間人口は1500万人にもなりますが、関東大震災では、火災旋風で逃げ場を失った多くの住民が亡くなっているので、相当な数の被災者が発生することは誰でも分かることです。
また、地震により発生する津波の被害は、湾岸の港区、品川区、江東区、江戸川区などで予測されているので、高い確率で東京で東日本大震災のようなことが災害が発生します。
ほかにも、古い家屋が密集する中野区、足立区、葛飾区などでは、1戸でも出火すれば、その火は、瞬く間に類焼して大火災になる可能性も高く、規模は違いますが、太平洋岸に面した地方都市も同様の危険性を持っているので、一刻も早い対策が必要です。
何よりも優先して、いますぐ対策を講じる必要がある事項は、湾岸地域の人口を減らす、住宅密集地の人口を減らす、の2つであり、そのほかにも、対策を応じる必要がある事案はありますが、まずは、被災者の数を絶対数を減らす対策が重要になります。
このまま日本特有の「問題の先送り」により、貴重な時間を浪費していったら、100%大惨事を招くのでいままで、有効な手立てを実現してこれなかった国は「最後のチャンス」との想いで、強力なリーダーシップを取って、都市部の住民を少しでも多く、安全な場所に移住させる施策をするべきです。
いま、この瞬間、明日、明後日、いつ発生するか分からない首都直下巨大地震のリスクを考えた場合、もはや首都圏に住むことは安穏としていられるレベルではない筈ですが、一部の人達を除くと、政治家も国民も、誰も、今回の首都直下巨大地震に対しても、ほかの各種問題や自然災害同様に、相変わらず危機感が大きく欠如しているので、やはり、この国は、滅びるしかないのかもしれませんが、それでは、悲しすぎます。