空き家問題

 
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深刻化する空き家問題


いま、日本中で、空き家の増加が問題視されていますが、根本的な問題の解決法が見つかっていないので確実に、その数は、増加し続けます。
空き家の増加は、少子化・高齢化や核家族化が進む中、地方や郊外だけではなく、都心でも
増加してきており、その増加数は、右肩上がりであり、いまや、日本全体の問題となってきています。
2018年の全国の空き家は、約850万戸に上り、空き家率は、13.6%と過去最高を記録し、日本国内の5戸に1戸は、空き家と言う状態になっており、いまの段階でも非常に悲惨な事態です。
この空き家の中には、賃貸用や売却する予定の住宅のほか、別荘などが含まれますが、この中で空き家問題とされているのは、そのいずれにも当てはまらない「その他の住宅」であり、その数は、空き家全体の4割を超えていますが、その多くが築古であり、破損や腐朽が見られているので、倒壊等による2次災害リスクが高まっています。

日本の都市計画


日本の都市計画は、1968年にできた都市計画法に沿って行われてきましたが、この法律は、宅地開発を容易にする法律(住宅を造ることを前提にした高度経済成長期仕様)なので、この法律に基づく日本の都市計画(どこもほぼ一律)と住宅政策が、どんどん空き家を生み出しているので、まちづくりに問題を抱えていない地方自治体は皆無であり、日本全国で、住宅が常に供給過剰になっています。
それでも、市街化を促進する「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」を分けるという線引き制度と開発許可制度により、当初は、ある程度、開発をコントロールできていましたが、時代とともに、政治的な圧力などによって「緩和、緩和」の大合唱で、農地の中にポツンポツンと住宅や賃貸アパートが建つようになり、その少ない住宅や賃貸アパートのために都市インフラ(上・下水道)を整備すること(調整区域の本来の主旨は開発抑制なので、そこに上・下水道を引くのはナンセンス)は、地方自治体の財政には大きな負担になります。

北海道に多い都市計画の失敗例

 
北海道の夕張市は、過去は、石炭産業で栄えていましたが、その石炭産業が衰え、10万人以上いた人口が3万人ほどに減って(いまの夕張市の人口は9000人弱)も、なお、市営住宅の建設を続けた結果、その市営住宅は、いまでは、空き家だらけになり、見るも無残なゴーストタウン化しています。
これは、
そもそも、10万人以上が住んでいた土地に、容積率を利用して20万人分が住めるくらいの住宅を供給したことが主因ですが、これでは、家が余るのは当然であり、その結果の夕張市の惨状は、敢えて言う必要はないと思います。
これは、帯広市も同じであり、郊外の調整区域を市街化区域に編入する区画整理を行った結果、JR帯広駅を中心とする、マチナカは、駐車場と空き家だらけのスカスカ状態になってしまい、中心部が、スポンジ状態になる一方で、郊外の宅地化が続けられ、居住地が、薄く広がってしまっています。
苫小牧も、この問題が顕著であり、2010年代に入って市の東側(沼ノ端地区)で大区画整理をし、大型のショッピングモールを誘致して市街地を広げましたが、いまでは、駅前に4つあった大型店は、全部潰れてしまっており、この問題の根っこは、無計画な都市計画にあり、人口減少社会において「ウチのマチだけは、人口を増やしたい」という地方自治体が、新しい住民を呼び込むために、市街化調整区域の開発規制を過度に緩和して、新規の宅地開発にゴーサインを出した結果近隣の地方自治体同士で人口の奪い合い合戦になり、その戦いに負けた地方自治体からの人口の流出が止まらず、結果、人口の減少による活力の低下、ゴーストタウン化が進行しています。
このように、北海道には、人口が減り始めてきた平成以降も、元の市街地の4~5倍の規模で郊外開発をしている地方自治体が多いので、この問題は、北海道全体の問題とも言え、事実、2040年消滅可能性地方自治体には、北海道の殆どの市町村が名前を連ねています。

「人口が増えれば良い」は大きな間違い


山梨県の昭和町は、農地の住宅地化を積極的に進めた結果、全国有数の人口増加率を誇っていますが、決して、成功事例として褒められるレベルではなく、数年後には、大きな失敗例となる可能性があります。この根拠は、人口増加の中身を分析すると、明白になりますが、いまの状態は、非常に危険な状況です。
具体例で言うと、昭和町は、この5年間で、0~14歳の子供人口が150人増え、生産年齢人口(15~64歳)も750人増えていますが、大問題なのは、増加人数は1850人も増えていることであり、つまり、1850人-(0~64歳の増加数150人+750人=900人)なので、増えた半数以上の950人は65歳以上となります。
つまり、高齢者が異常に増えているので、これからの福祉関係の費用負担増は、とても深刻な状態になることが予想できますが、この理由は、長期的な視野に立った計画を立案せずに、一言で言うと、何も考えずに、40年前から乱開発を続けてきた結果であり、当時30歳代前後で流れ込んできた人たちが、いま続々と65歳を超える高齢者になってきており、何も考えずに、人口を増やそうとして若い世代を呼び込むと、数十年後には、高い確率で、高齢者の大激増に見舞われるという悪い方の事例になります。
このように、単純に、総人口だけを見て「増えている」「減っている」という思考は、短絡的であり非常に危険と言え、近視感的な視点で物事を判断すると、後々、とんでもないしっぺ返しを受けることになります。
つまり、確実に訪れる住民の加齢という一面を、まったく考慮しない近視感的な都市計画の末路は、財政破綻です。

首都圏の失敗


東京圏でも人口を増やすために、郊外の農地エリアの開発や都心のタワーマンション建設を許容していますが、首都圏の苦境は、昭和町レベルでは済みません。
「若者の流入が加速する東京」と言われるように、東京・埼玉・千葉・神奈川の首都圏一都三県の人口は、最近5年間に51万人増え、うち42万人が、首都圏外から流れ込んできた現役世代ですが、人口の中身(内訳)が、経済や財政には重要になります。
しかし、流入人口のバランスの悪さは、首都圏も同様であり、たしかに、
最近5年間の首都圏には、生産年齢人口42万人が流れ込みましたが、増減を計算すると、生産年齢人口は75万人の減少であり、この間に65歳以上の住民が134万人も増えており、うち80歳以上だけでは52万人の増加です。
つまり、最近5年間の首都圏の総人口は51万人増、うち80歳以上が52万人増なので、増えたのは80歳以上だけであり、79歳以下は減少しています。
これは、高度成長期以前に上京した若者が加齢した結果ですが、非常に激しい高齢化であり、
目先の人口増加ばかりを追って、都市開発を無計画に行ったことのツケと言えます。
現役世代が減って高齢者が増えると、税収が減る一方で、社会保障関連のコストが、どんどん膨らむことになるので、地方自治体にとっては深刻な危機ですが、この問題を抜本的に解消する手段はありません。

つまり、これからの地方自治体が行うべき人口対策は、
総人口は、どうでも良い問題であり、中身が重要です。

東京23区


意外に思えるかもしれませんが、空き家の数が一番多いのは、東京都世田谷区であり、その数は、50000戸を超えており、2番目に多いのも、同じく東京都の大田区48000戸、ほかにも、東京都23区内では、足立区の39000戸もあり、人口が増え続けていると思われる東京都でも、23区中3区は、全国上位の空き家率になっています。

空き家予備軍

 
東京23区内のような都市部でも、高齢化率の高い地域や築古の建物が多い地域では、空き家問題が起きやすく、空き家が発生する
大きな要因は相続です。 
例えば、田舎の両親が亡くなっても、その子どもたちは都心に別居となれば、購入者も見つかりにくいので、家を処分できず、結果、ただ放置することになり、その戸数は、全国で70万戸にもなります。
つまり、子どもが実家を離れ戻らないと決めたときから、実家の空き家化はすでに始まっている、のと同じなので、現在、高齢者だけの世帯が住む住宅を「空き家予備軍」と捉え、空き家の発生を未然に予防する取り組みが必要であり、空き家予備軍は、都心に比較的近いエリアが、危険エリアに多く含まれていますが、これは、高度経済成長期に整備されたニュータウンなどが、街ごと高齢化するためです。

世帯数の減少


国立社会保障・人口問題研究所が2013年1月に推計し公表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」では、一般世帯総数は、2019年の5306万世帯をピークに増え続けますが、その後は、減少の一途で、2025年は、5243万世帯(2019年比▲63万世帯)となり、2035年は、4955万世帯(2019年比▲351万世帯)になると予想されており、少なくとも、この減少数と同数の住宅数を減らさないと、その差額分の住宅の数だけ確実に空き家が増加し、これは、空き家率の上昇につながり、その地域のゴーストタウン化につながり、2033年の空き家率は、30.2%(3戸に1戸)まで上昇すると予測されています。

首都圏マンションの供給状況


不動産経済研究所が、2016年12月に予想した首都圏における2017年のマンション供給は、前年比よりも6.4%増し、これにより、上昇し続けていた販売価格は、2016年にようやく止まり、建築コストが若干下落していますが、今後は、
都区部近郊や郊外の駅近などの物件が市場をけん引していくことが考えられ、マンションの建設ラッシュは、しばらくは、継続することが予想されますので、これからは、マンション内での空き家問題が多発することも予想されます。
また、いまのお台場の人口構成と40年前の高島平の人口構成は、ほとんど同じなので、40年後には、お台場の高層マンション群も、いまの高島平のような高齢化が進んだマチになりますが、お台場の超高層マンション群の多くは分譲なので住人が入れ替わりにくく、ローンを抱えたまま、そこで歳を取っていく人々が続出する恐れがあります。

関東と関西の違い


近年の東京圏では、都心まで40~50分かかるような場所では、新築住宅は売れなくなってきており、例えば、埼玉県の春日部市などはアクセスも良く、近隣には、巨大ショッピングモールもあるので、人口が増加しても良い筈ですが、いまの姿は、人口減少が進んでおり、新規の団地開発もありません。
しかし、関西では、いまも盛んに新規の住宅供給があり、大阪府北部や神戸市の都心から40分の駅から、さらにバスで20分もかかるようなところの家が売れていますが、このような物件は、長期的に見れば、100%資産にはならず負動産にしかならないのに、いま新規の住宅の供給が完全に止まっても、過去のストックがあるので、想像を絶する「家余り時代」に突入するのに家を購入していますが、これは、買う人のマインドに問題があります。

原因①相続未登記


空き家問題は、空き家予備軍以外にも相続未登記問題も大きく、なぜ、未登記が発生するかと言うと日本には、相続登記の義務がないので、親やその上の世代が、相続登記を放置した結果、子どもの世代で手続きをすれば、まだ良いですが、その子どもの世代も放置すれば、いざ土地などを処分しようとしてもその時には、相続人の数が相当な数になってしまい、非常に手間のかかる作業と多額の費用が必要になるので、そのまま、名義を変更せずに放置することになります。
その結果、所有者不明の土地が増加し、処分するにも処分できない空き家をつくる原因になります。

原因②戸建て住宅の過剰供給


また、住宅の過剰供給も大問題です。
日本は、近い将来、確実に人口が減少し、住宅需要が先細るのは確定ですが、それにも関わらず、いまだに年間約90万戸の住宅が新設されており、金融機関も、何も考えずに、住宅ローンなどの融資を出し続けているので、このまま、住宅の供給が続けば、人口が減る地域を中心に、負動産の増加は、避けては通れず、処分しようにも処分できない住宅が増え続けることになります。

原因③マンションの供給過剰


マンションの供給過剰も、戸建て住宅と同様であり、違いは、
戸建て住宅は1戸(1世帯)単位ですが、マンションは、大きいモノだと数百戸単位で戸数が増加するので、空き家問題に与えるインパクトは、戸建て住宅の比ではなく、その悪影響が及ぼすダメージも戸建て住宅レベルではありません。
具体的には、例えば、相続した家があっても、マンションに既に世帯を構えていることで放置されているケースも多くみられたり、元々は、戸建て住宅を所有していた高齢者が、子供が独立し身体的に不自由な部分を抱えたことなどで、地方や郊外の広い家や自宅を処分して、マンションに移り住むケースもあります。
また、介護施設などに移り住んだまま所有者が亡くなり、そのまま、空き家状態になっているケースもあり、このような場合、空き家の長期間化は避けられません。

悪影響


①倒壊による安全面の懸念
 
 空き家の倒壊による安全面での懸念が最も深刻な問題であり、
大災害が起きれば人が住んでいる家でも
 倒壊する可能性はありますが、長期間、放置された空き家が倒壊する可能性は格段に高まります。
地震
 や台風、大雪が降るような地域であれば、雪の重みによる
倒壊も想定されます。

②治安の悪化 
 
空き家が増えると治安が悪化し、空き巣被害が頻発する、不法占拠者が出る恐れが高まる、放火リスク
 が高まる、など、空き家は、自身のみならず、その周辺にも、様々なリスクを与えます。

③景観の悪化 
 
空き家は、誰も手入れをしないので、外観も悪化していき、庭があれば、枝や葉が伸び放題となり、近
 隣の住宅に影響を及ぼす場合もあり、空き家の数が増えると、
その悪影響力は加速します。

④周辺の生活環境の悪化 
 空き家が増え、街の人口減が顕著になってくることにより生活環境が悪化する可能性が高まり、
スーパ
 ーマーケットや銀行といった生活に密接にかかわる店舗が、撤退したり、その後の新しい店舗も入りに
 くい悪循環に陥り、
人口が減ることにより、ビジネス面の環境悪化、それに伴い生活環境の悪さを敬遠
 して新たな人口流入も見込めず、さらに店舗の撤退が進む、といった具合の悪循環が起こり、
ゴースト
 タウン化します。

空き家率の低下が必要


空き家数や空き家率が増加すれば、住環境は、確実に悪化し、行政コストも確実に増大します。
空き家問題は、色々な問題が生じてしまうため、出生率を向上させるといった対策や、活用価値が低い住宅を除却する対策、さらには、中古住宅の流通市場を整備し、リフォームやリノベーションでの減築などへの対策が、積極的に進められる必要がありますが、日本の地方自治体の判断や実行力は、世界でも、遅く低いことが特徴なので、その地方自治体を選んで住んだのは自分なので、空き家問題の解決や対策を、地方自治体に期待するのは筋違いであり、これは、自己の責任を放棄した責任転換にしかなりません。

超高層マンションの末路


超高層マンションの開発業者は、超高層住宅の末路は知っており、表現は悪いですが「買う奴がいるのだから、いま売れれば良い」という「売り逃げの論理」で突っ走っているだけであり、東京都心に急増している分譲タワーマンションの多くは近い将来、多数の高齢者を抱え込んだタワーマンションは、大きな社会問題になるリスクが高いので建築や住宅業界の人は、ほとんど、タワーマンションを買っていません。つまり、首都圏の家を買うリスクが、大きすぎるのであり、タワーマンションは、修繕1つをとっても、そのコストは膨大になります。
タワーマンションの大規模修繕や建て替えの際は、住んでいる住民の意見をまとめる必要がありますが、何百世帯もの合意を得るのは非常に難く、また、
消防車の梯子が届かないような高さの建物の修繕は、かなり技術的にハードルが高いので、将来的には、湯沢町のように、十分な修繕ができない「立ち腐れ超高層」になる可能性の方が高く、その結果、ゴーストタウン化した限界タワーマンションが激増します。
しかし、そのような劣悪な状態になったマンションであっても、居住者は、税金や管理費・修繕積立金を負担し続けるしかありません。

空き家問題について


空き家問題は、自分だけが気を付けていれば、解消や予防ができる問題ではないので、自宅の購入前に、その地域全体の人口と人口構成比率、できれば、将来的な人口予想と人口比率までを考慮する必要があります。
空き家問題の根本的な対策や解決は、国や地方自治体が主体で行うべきですが、その前に、個人が、できる対策としては、空き家問題が、深刻化しないであろうエリアを選定して住宅の購入をすることであり、具体的には、10年後、20年後の街の姿を想像し発展していくか?、人口の増加が見込めるか?、をポイントに購入物件の選定を行う必要があります。
重要なのは、いまは人気がある、この地区しか自分には買えない、というポイントではなく、将来、子どもたちに財産として残せる地域か?否か?の見極め(これを間違えると負動産)になります。
この悪い例が、新潟県の湯沢町ですが、バブルの頃に乱立した超高層のリゾートマンションの部屋が、いまは、超格安で売りに出ていますが、持ち主の立場では、資産価値が暴落しても、廃棄もできず、固定資産税や管理費、修繕積立金という支出が、ものすごい重荷になっているはずです。
さらに、いくつかのマンションでは水回りが老朽化し、蛇口から出る水道水も飲用として使えないので、住民は、ペットボトルの水を買っているケースもあるようです。

当然、
自身も暮らすのですから、景観や治安は、もちろんのこと、今後、賃貸物件として貸し出したり売却するケースも考え、物件探しをする必要があり、間違っても、不動産会社やハウスメーカーの言うことを鵜呑みにして、自分で考えることを放棄して自宅を購入することは止めるべきであり、湯沢町のリゾートマンションような惨状になってしまっては、目も当てられません。
万が一の場合(転勤等で賃貸で貸す、売却)その街が、人気があれば、比較的スムーズに話は進むと思いますが、ゴーストタウン化してしまっていると、その難易度は一気に上がり、現実問題としては、希望通りにはいかない可能性の方が高くなるので、その街の将来性だけでなく、その地方自治体が、空き家対策に真剣に取り組んでいるか?という点も重要な判断要素であり、地方自治体が、やる気がなければ、結果として、その地方自治体、その地域のゴーストタウン化は、確実に、進むことになります。