地球温暖化の日本への影響

 
   

世界規模で急速に進む海面上昇

 
四方を海に囲まれている日本にとって、世界規模で注目されている海面の上昇は決して目を背けることができない重要な問題であり、海面上昇が進むと日本も深刻なダメージを受けることになります。
すでに始まっている海面上昇を食い止めるためには世界規模での取り組みが不可欠です。
 

海面上昇による日本への影響

   
海面上昇の影響として一番に思い浮かぶのは沿岸部の水没ですが、日本は周囲を海に囲まれており、海抜が1.0m未満の場所が国土全体の0.6%と言われています。
1.0mの海面上昇が起こると沿岸部を中心に0.6%の国土が海に沈むことになり、環境省の資料を見ると以下のようなことが推測されています。
 
・大阪の北西部~堺市にかけての沿岸部が水没する
 
・東京都の江東区・葛飾区・江戸川区・墨田区のほぼ全域が水没する恐れ
 
・日本全国の砂浜の9割が消失する
 
・沿岸部に生息する生物への影響が出る
 
・河川や地下水へ塩水が侵入する
 
など、馴染みのある自然・仕事場・よく遊びに行く施設・通勤に使用している道など、海面上昇により壊されるのは物理的な自然・物だけではなく人間の営みそのものになります。
 

都道府県別・海面上昇による海岸侵食面積の割合

 
 
・30cmの海面上昇で砂浜の56.6%
 
・65cmの海面上昇で砂浜の81.7%
 
・1.0mの海面上昇で砂浜の90.3%
 
が消失すると予測されています。

都道府県別では、
 
・岡山県では65cmの海面上昇
 
・秋田県、山形県、東京都、福井県、京都府、大阪府、和歌山県では1.0mの海面上昇
 
で砂浜が完全に消失すると予測されています。
現在でも侵食が進んでいる日本の海岸は、海面上昇の影響により将来はさらに深刻な状況を迎えることになり、砂浜は日本の海岸の約24%しかありませんが、その約43%が近年、侵食されつつあります。
過去70年間に、すでに約120km2の国土が侵食により失われましたが、30cmの海面上昇によりこれとほぼ同面積の砂浜が侵食されることになり、現在の美しい砂浜の景勝地や海水浴場は海面上昇により失われてしまうことになります。
 

日本で起きている異常気象

  
最近の日本は、暑くて寒い
 2013年夏、日本列島を例年にない猛暑が襲い、この年の8月12日には高知県四万十市で41.0度という国
 内の観測史上最高気温を記録する一方で、2018年1月には東京でも20cm超の積雪が観測されたほか、さ
 いたま市ではマイナス9.8度という観測史上最も低い気温が記録されました。
 近年、夏が来る度に猛烈な暑さとなり、熱中症で救急搬送される人も増える半面、冬になると耐え難い
 寒さに震えるなど日本の気象は暑さと寒さが極端になる傾向にあります。
 
身近な異常気象「熱帯夜」 
 夏日真夏日猛暑日熱帯夜
日中の最高気温25度以上30度以上35度以上-
1日の最低気温---25度以上
1914年107日54日0日5日
1964年109日52日1日12日
2014年125日45日5日29日
 
夏の暑さを測る目安として、気象庁が設定している夏日・真夏日・猛暑日・熱帯夜の区分があり、夏日・真夏日・猛暑日は、その日の最高気温によって熱帯夜は最低気温によって区分されその基準は上の表のとおりです。
 
熱帯夜の原因
 熱帯夜は、特に大都市圏で発生頻度が高まっており、
 
・エアコンなどの空調機器や燃料を燃やすことで生じる人工排熱の増加
 
・地表面のアスファルトやコンクリートなどの人工の被覆物の増加
 
・中高層の建築物の過密化
 
・緑地や水辺が減ったことによる冷却機能の低下と喪失
 
などが理由と考えられています。
 
熱帯夜で増える夜間熱中症 
 熱帯夜になると、熟睡できないために心身の疲労が取れにくくなります。
 日中の集中力低下から仕事の効率の低下・事故の発生につながる恐れも指摘されています。
 さらに、夜間に熱中症を発症する夜間熱中症も増えており東京都が2013年7月~8月にかけてまとめたデ
 ータでは、熱中症で死亡した人の30%が夜間(午後5時〜翌朝5時)の発症であり、その多くはエアコン
 などの冷房機器を使用していなかったとみられています。
 夜間熱中症を防ぐためには、暑さを我慢せずにエアコンを使用し、水分をこまめに摂取するなどの対策
 が必要です。
 

日最高気温と65歳以上の死亡率の関係

   
 
地球温暖化により夏季に気温が高くなる頻度と期間が増加すると熱射病などの発生率や死亡率が増加するおそれがあります。
日平均気温が27.0度、日最高気温が32.0度を超えると熱射病などの患者数が急激に増加し、特に高齢者の死亡率が増加することも分かっています。
 

公害が拡大

  
 
夏になると光化学オキシダント、いわゆる、光化学スモッグにより目や喉の痛みなどの被害が発生しています。
気温上昇は大気中の光化学反応を加速するので温暖化した場合、多くの都市で光化学オキシダント濃度が増加し、健康影響が拡大すると予想されています。
他にも水質汚濁など、さまざまな公害の影響を助長するおそれがあると考えられます。
地球温暖化が進むと、大気の光化学反応を加速させ対流圏におけるオキシダント濃度を増加させることが予想され、東京湾周辺では地球温暖化により気温が5度上昇すると、光化学オキシダントの1時間値の最高値180ppb以上(※)が出現する地域が北関東を中心に拡大すると予測されています。
 
(※)光化学オキシダントの1時間値:環境基準では0.06ppm(60ppb)以下であることと定められています

公害に及ぼす影響

 

河川や湖沼の水質悪化の他に地盤沈下、土壌汚染、悪臭などが間接的に増加する可能性が考えられます。

「マラリア」流行地域の拡大

 

 
最近の調査結果では死亡率の高い熱帯熱(マラリア)が、従来よりも低い気温(最低月平均気温13.0度)でも流行すると考えられており、最悪の場合、2100年には、中国北部・韓国・西日本一帯までが流行危険地域に入る恐れもあります。
地球温暖化により地球全体のマラリアの流行可能地域が10~30%、流行危険地域の居住人口が約5億人増加し、アジアでは中国南部・インドなどの現在の流行地域の周辺でリスクが高まると予測されています。
冬季の気温が3.0~5.0度上昇するとマラリアを媒介するハマダラカの生息域が拡大し、日本でも亜熱帯気候地域を中心として深刻な状況が生じるおそれがあります。